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思いついたことを、いろいろと。


by satomimiwo

オタマトーンでじたる

オタマトーンでじたる_b0056352_21245750.jpg

オタマトーンでじたるのアピール絵。
でかい画像にしてみました。
# by satomimiwo | 2014-12-09 21:25 | 明和電機
明和電機EDELWEISS展in芳澤ガーデンギャラリー_b0056352_19152148.jpg5月3日。
社長がエーデルワイスの詩の朗読をするというので、行って参りました。
金沢駅から出発、秋葉原着の日本中央バスを使用しましたが、これ、座席が広くてよかったー。
座席が深いために、足が余らずに済んで疲れないんです。これ、最高でした。
帰りの西○バスは相変わらず狭かった…

さて、市川駅までついて、なにしろそこから目的地までは約20分ほど歩きますので、フラフラしながら歩きました。フラフラ、ゆっくり。その日の空気を楽しむように。
神社が何か所かにあったので立ち寄ってお参りなどしつつ。

通り道、エーデルワイスのポスターがいろんな所に貼られてました。


さて、会場近く。
傍の駐車場に見慣れたジープが既にとまっていたので、おお、って思いました。
よくアトリ工で見かけるあのジープです。そういえば、このジープで社長と工員さん3人乗って福島のライブに行かれたんですよね。

四季折々の花の中を通って、ガーデンギャラリー中に入ります。




ギャラリーの中に入ると、既にずっと自動演奏ピアノの音が鳴ってました。
会場奥の演奏スペースの左わきに場所を取って、朗読会用の曲を打ち込みされていたのでした。
内覧会では、アニエスバージョンの制服のスタイルでしたので、それなのかなー、と思ってたら違いました。
私服以外で黒い服の姿の社長を見るのは何年振りだろう?

明和電機EDELWEISS展in芳澤ガーデンギャラリー_b0056352_19173246.jpg
   社長はヘッドホンを装着して、打ち込み。この世界に溶け込んでいました。


エーデルワイスをされる社長は、明和電機土佐社長、ではなく、土佐信道個人です。
ですので、社長は社長から変身するのです。

私はこの状態の社長を、仮にNOVMICHIさんと呼んでましたが。
でもやっぱり話しかける時は社長、って言ってしまいますね。

久しぶりに見たエーデルワイスの黒い社長は、2006年の黒い社長とはまた違って見えました。
やっぱり、あれからいろんなものを超えてきた社長でした。
それは、エーデルワイスシリーズ全ての作品にも言えます。
タイムスリップするように、時が蘇るのかな、と思っていましたが、そうではなく、結晶化したものを新たに紐解いたような感じです。

薄いカーテンを挟んで、向かって右手にスケッチ群、左手にオブジェがならんでいました。
スケッチはアクリルの板の下にいくつか束ねて置いてあり、その重ねてある下が見たくなるジリジリと切なくなる構造でした。

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    スケッチ群。一枚ずつではなく、重ねた束やノートがアクリルの下に。

プードルズの反乱のスケッチは、物語全て描かれていたことが分かりました。
走り書きや、消しゴムで消した跡だけのコマもありましたが、物語全てありました。
男娼の、切断シーンと苦悩、DOGのプードルズたちが排気ガスに陶酔している姿も。
当時の、社長が描いたものなんでしょう。
消しゴムのカスもそのままになってて、時が止まったみたい。
それは未完成なので、そのページを見ることはもうないかもしれない。
そして生の原稿に直接触れることが出来るより勝るものはないのでした。
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プードルズの反乱の物語。ボクが物語を覚えるたびに星の刺青を施されるシーンでしょうか。
これは、数年前の私が喉から手が出るほど見たかったもの。いや、こんな絵コンテが存在することは知らなかったのですが。
良かったね、私。ほんまによかった。

さて、今回新作の泣き羊、残念ながら完成した物語をみることは叶いませんでした。
それでも、いくつかのキーワードを拾うことができました。
主人公のボクは、人工子宮で育った末京のオス達の調教師で、オンブツと呼ばれる、プラスチカとオルガティカで出来たギフトを使って、オス達を調教していきました。
そして末京は、薔薇の黒点病のようになっていた、ということ。
いつか完成系を読みたいです。

明和電機EDELWEISS展in芳澤ガーデンギャラリー_b0056352_19301721.jpg泣き羊がぽろぽろと涙を流すところは私は遂に見れませんでした。
その代り?羊の銀の涙を、ボールペンの先でくるくるとかき混ぜる社長が見れました。
その光景はちょっと面白かったです。
「…モーターを、逆に取り付けちゃった(テヘ)」って。

羊の涙になっている、液体金属のガリウム、触らせてもらいましたが面白いですね。
「指が黒くなりますよ」って社長が言いましたが、なんかさらっと弾くんです。指先で玉になる。不思議な感触。
あたりが柔らかく、温度はぬるい感じ。会場がぬるいせいだったのかは分かりませんが…。

泣き羊の台がところどころ白抜きのようになってたのは、やはりガリウムがこぼれたせいみたい。



明和電機EDELWEISS展in芳澤ガーデンギャラリー_b0056352_19401058.jpg今回嬉しかったのは、獏のオルゴールを好きな時に鳴らせたことです。

ボタンを押すと灯りがともり、曲に合わせて中の獏が小さく動きます。
獏が祈るように縋るように上下する様が切ない。

社長がピアノに獏の曲を打ち込んでいるとき、この獏のオルゴールを鳴らすと綺麗にハモって面白かったです。

「BAKU」は、末京のメス達の心に侵入するためのプログラム名です。


明和電機EDELWEISS展in芳澤ガーデンギャラリー_b0056352_195117.jpg 棺型のケースに囲われた、心拍に合わせて光るペンダントのプレエーデルに、EDELWEISSの花の電飾が映り込んで、緑に輝いています。


明和電機EDELWEISS展in芳澤ガーデンギャラリー_b0056352_2114266.jpg明和電機EDELWEISS展in芳澤ガーデンギャラリー_b0056352_22342594.jpg明和電機EDELWEISS展in芳澤ガーデンギャラリー_b0056352_22382771.jpgさて、一旦会場を離れ、朗読会が始まるまで外で待ちます。
朗読会は、展示場内で行われました。
社長は、打ち込みをされていた場所と同じポジションに居ます。
「今日はおちゃらけゼロです」と始まった朗読会、見事なまでに社長は終始無表情で、素晴らしいと思いました。
社長にとっても、こんな淡々としたイベントは初めてのようでした。
実に貴重です。
まず言葉ありき、のEDELWEISSのシリーズ。

EDELWEISSの物語には、それぞれイメージするBGMがあって、物語を作っている間、そのBGMを頭に描いていたようです。

EDELWEISS PROGRAMを朗読し、その合間にインスピレーションを受けた曲を流す、というものでした。曲は全てメインは自動ピアノの演奏によるもの。
曲順をあげていこうと思います。

1.テンク城のお姫様 
INTRODUCTION
テンクは109。社長の中のポエムが爆発した時、最初に現れたイメージなのでしょうか。
王子に扮した社長が、お城のお姫様に向かってラブを語ってる絵を思い出します。

2.スラブ舞曲 
THE MATSUKYOのエンディング
アレンジが本当に可愛いらしい曲で、すごく好きです。
アップルエンジンの章の前に演奏されたこの曲、前章の末京のイメージなのか、月宮のイメージなのかわからないのですが、私には真空の孤独な月面の世界に佇むボクが目の前に現れました。

3.麦の歌
THE APPLE ENGINEのチャプター1後
これは月宮で生命を育む強いイメージの曲。
僕たちはここで生きていく。

4.君はエプロン僕はパンタロン
THE APPLE ENGINEのチャプター4後
あの、実は曲中の恋人たちは死に向かっているという衝撃の事実が判明した曲。
確かに、このボクも胎児のイコンを抱えて地球のメスを想い、月を飛び立ち、死の可能性もある未知の世界へ飛び立っています。

5.ママは試験管 
THE REBELLION OF POODLES チャプター2中
緑の甲冑の男娼たちが行進する様のイメージでしょうか。とても力強い感じです。
この勇ましい行進を見て、オス達は本来の衝動を思い出すのですから。

6.MIDNIGHT IN E-STAR
THE REBELLION OF POODLES チャプター5後
これはプードルズたちが士気を高め、戦う曲ですよね。
この曲は本当にかっこいい。社長は自動演奏にオタマトーンDX、トントン君を使って、プードルズたちの激しい息遣いを表現されていました。

7.泣く羊の物語
プードルズの反乱の物語のあと、最終章の前に位置していました。
執筆中だそうです。

8.亡き王女のためのパヴァーヌ
THE HUMMING COMBチャプター1中
古代の墓から発掘された女王のお墓には、亡き王女を偲ばせるアクセサリーが12個、入っていた。
EDELWEISSの物語の最初のきっかけ。
理想の女性のための装飾品を作るということ。
これは、オタマトーンDXだけで演奏されました。

9.テンク城のお姫様
物語一番最後です。
はじまりとおわりにかかる曲でした。
最後の消え方が美しい曲でした。

ムスタングが墜落し、プードルズたちは完全に敗北する。
末京のオス達も、精神的に完全に去勢される。
けれど、そこから古代の墓が発見され、王女の為のアクセサリーが見つかり、新しいボクの物語が始まって、全てが終わる。




朗読の冒頭から、APPLEENGINEの物語の冒頭までをYOUTUBEにアップしてみました。
曲は、テンク城のお姫様とスラブ舞曲になります。
このスラブ舞曲、本当に可愛い曲なので何度でも聞きたくなります。


EDELWEISSをテーマにした演奏は、2004年の新宿は初台で行われたランチタイムコンサート以来ではないでしょうか。
まさかここにきてEDELWEISSをテーマに演奏が聴けるとは思っていませんでした。
自動演奏ピアノでの楽曲は、儚くてどれも美しいものでした。
もう同じものを聞けることはないんでしょうか。勿体ないです。

☆グッズなど
今回の展示では、グッズ展開が新しかったです。
缶バッチのガチャガチャや、社長の金太郎飴にせんべい。
EDELWEISSの6つの物語の象徴がプリントされたビニールバッグ。
明和電機EDELWEISS展in芳澤ガーデンギャラリー_b0056352_22154640.jpg
ガチャガチャはコンプリートするまでまわしちゃると頑張りましたが、明和電機の文字のやつだけ出なかった…


グッズで特に感動したのがこれ。箔押しのポストカード入れ。綺麗です。
明和電機EDELWEISS展in芳澤ガーデンギャラリー_b0056352_2220676.jpg語るに尽きないEDELWEISSの世界。

# by satomimiwo | 2014-05-30 11:30 | EDELWEISS
明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 マスプロ編_b0056352_8494055.jpgいよいよ最後のコンテンツになりました。
VOICEシリーズの隣には、アルスエレクトロニカで受賞後、フランスのパリで行われた、メカトロニカのDVDがループで流れているプチシアターがありました。
プチシアター、ICCではエーデルワイスのライブ模様が流れていました。それを思い出してなつかしかったです。

アルスエレクトロニカといえば、忘れもしない社長の「アルスってどこにアルんス?」というプチギャグがありますが、(一回しか聞いた事はないですが)まあそれはさておき。
このDVDで、セーモンズが独唱するシーンがあるでしょう。その曲と同じ曲を社長がオタマトーンDXで弾き流して移動するものだから…またこれがセーモンズと寸分違わぬ同じ息継ぎなんです。私にはそう聞こえる。ですからここから聞こえる音なのかはたまた違うのか、迷路に迷うのと同じ気分をひっそり味わってました。


さてこの部屋を抜けると明和電機のマスプロの部屋へと繋がります。

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 マスプロ編_b0056352_955857.jpgそれではいよいよ最後の話をここでしたいと思います。先ほどまでの話は、アートの話だったんですね。一般的にいう芸術作品の話です。
明和電機の経済活動はそのアートは販売せず、それを二次利用したもので商売をしています。その話をしていきたいんですが、キーワードはマスプロ、です。

これは何のことかと言いますと、古い方はマスプロアンテナでしょ、って言われるんですが違います。これは、マスプロモーションとマスプロダクトの頭を取ったんです。


マスプロアンテナ??と思いましたが、これ、ですね!このメーカーのマークで思い出しました。

日本語で言うと、マスプロモーションというのは興業です。吉本興業の興業ですね。

マスプロダクトというのは同じ響きですが工業、インダストリアルの工業。

この、アートを興業したり、工業したりすることで収入を得るんですね。じゃ興業って何、と言いますと、ひとつが明和電機の興業がライブ、です。
ライブパフォーマンス。日本だけでなく、海外でもライブパフォーマンスをします。明和電機が作ってきた楽器を使ってそれを売るんではなく、それを使うことで、ショー、ですね。ショーをやることで興行収入を得ます。この展覧会も興業、ですね。



それからもう一つがノウハウ、アートを作った時のノウハウを使っておもちゃを作ったり、それを使ってコンテンツ、CDやDVDなどのコンテンツを作ったりという事業をする。
その頭文字をとって明和電機はABCDEFG計画というのをやっていますが、AはART、BはBOOK,本を作ったり、CはCD、音、ですね。DはDVD、ビデオ、映像作品。Eがイーコンテンツ、Fがファッション、それからGはグッズ、おもちゃ、などなどです。
そんなたくさんのマスプロダクトを明和電機は作っています。

因みにどちらがより儲かっているかというと、現在ほぼ半分半分です。

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 マスプロ編_b0056352_9145850.jpg

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 マスプロ編_b0056352_9171034.jpg

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 マスプロ編_b0056352_9172611.jpg

こういうモデルはいつ思いついたのかといいますと、実は魚器シリーズの時にやりたいなあという想いはありました。特にマスプロダクトへの思いは強かったんです。
魚器商店、というアイディアがありましたね。魚コードができるまでP83参照。

父親が電機部品加工工場をやっていて、そこでの流れ作業を小さい頃手伝わされたりして、すごく嫌だったんですが、今思えばいい経験だったなあと思います。ベルトコンベアーにひたすら部品が流れてくるのを組み立てるんですけど。
その時、同じものを何千個と作るんですがそれがちょっと、あ、いいなあと思ったのが、例えると、折鶴と一緒だな、と思ったんです。
折鶴というのは鶴の形をしていますが、本質はあれではなくて、あれの折り方なんですね。
たぶん、大昔ね、これ空想なんですけど、平安時代に公家?公家が紙を折って遊んでたら、
「おー、鶴でおじゃる」鶴が出来た瞬間があったんですね。
「鶴でおじゃる」隣の公家も「鶴でおじゃる」「鶴でおじゃる」っておじゃるおじゃるが続いて、誰も止められなくなって、現在も続いている、という。
つまりこれは何が本質かというと、鶴の形ではなく、そのメソッド、折り方というもの、図面ですね、言わば。それがあることによって誰でも同じものを作れる。それが本質的なものになる。芸術作品というものも、もちろん彫刻や絵画、その場で描いたものが本質ではあるんですけれど、実はその向こう側にもっと、高次元の本質的なものがあって、それが例えば折鶴のようなものに近かったり、伊勢神宮とかね、20年ごとに壊して作り直してますが、ああいうものとか、何かそういう本質的なものがあるんじゃないか、という憧れがやっぱり強かった。

なので魚器シリーズを作る時にも、全部図面から作り起こせるように作りたいと思って作ってました。
そういう大量生産できる芸術作品というものに最初から憧れがありまして、それがここに繋がっているということになります。

<図面があれば、同じものが作れる。>

この話がとても気になる。
つまりそれは、作者が死んでも、物体がなくなっても、作り方さえあれば、いつでも何時でも、作り直すことが出来る。復活することが出来る。
それは、限りなく永遠に近いのではないだろうか。
一点もの、に拘らないのは無限に近いと。そう思えてしまう。
明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 マスプロ編_b0056352_9205723.jpg

魚コードの大量生産までの過程。この黒いラベル部分を、展覧会会期中に社長は作って貼っていました。
明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 マスプロ編_b0056352_932244.jpg

こっちはなにかというと、こっちもボクの特徴ではあるんですが、物凄い出たがり、なんですね。目立ちたがり屋と言いますか。
僕もう小学校のお楽しみ会の時には絶対ピンクレディーを踊ってました。人前に出てサービスするのが大好きなんですね。
芸術家にしては、ちょっと異様ですね。芸術家っていうのは割とみんな内気な方が多いんですが。
見せたがり、というのがありまして、土佐家がそういう家だったんですね。
こたつの上で正月に絶対芸をやらなくちゃいけない、という家なんで。
そういうのが生きてこっちに繋がってる、という。


この二つのマスプロが明和電機の二本柱になって生業としてうまくいっております。

こういうことをやるのは一人の力では絶対無理で、協力してくれるみなさんがたくさんいるから明和電機が生きているというのがあります。

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 マスプロ編_b0056352_937834.jpg

左に写っているのが明和電機のファッション。真ん中のミントブルーの制服は、アニエス・ベーのオートクチュールの制服。
この真ん中のおおきなテーブルの上で、明和電機の出版物読み放題だったり、社長がサイン書かれたりしていました。

みなさん長い間ご清聴ありがとうございました。

社長のギャラリートークは述べ一時間半の長いもので、聞き応え満点でした。
会期中、通算3度社長はギャラリートークを行われて、大変だったと思います。
社長が座ってる姿を見ることは殆どありませんでした。休憩といってもすぐサインに走ったり、その時間もほぼ無いと言っていいくらいでした。社長の辞書には面倒だとか、疲れたって言葉はないんじゃないのかとも思えます。動ける人、というのはこういうことなのだな、と。

この展覧会では撮影OKという異例の事態に甘んじて、しかも地元でしたので撮りまくりました、それはもう。
記録がないと生きていけないのかお前は、というくらいに。記録大事です!記憶なんてあてにならないですから。
ですので、そんな想いもあってこのギャラリートークも書き起こしました。

さて、これで金沢21世紀美術館での社長のギャラリートークは終了です。
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございました。
# by satomimiwo | 2014-03-29 09:40 | 明和電機20周年展
明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_17342063.jpg
廊下を突き当たった右手に、ボイスメカニクスシリーズの部屋があります。
赤いイメージカラーにVOICEの文字。
それぞれのシリーズにはそれぞれのロゴがありますが、このVOICEのロゴは人の口のようにも見えます。その為に、この文字をずっと見ていると、口が空いたり閉じたり、会話しているように見えます。

赤い文字が、社長のトーク部分になります。

こちらがボイスメカニクスのシリーズになります。
EDELWEISSは、30代の仕事です。現在も進んでますが、中核は殆ど30代で出来上がったものになります。
魚器シリーズは20代、では40代は何をやり始めたかというと、ボイスメカニクスというシリーズになります。
このシリーズの特徴は声、ですね。声を模しています。何故声か、といいますと魚器シリーズとEDELWEISSシリーズの経験を踏まえてなんですが、一つは、声の仕組みが面白かったんです。
声を楽器として見たときに、とても奇妙な楽器です。
まず、単音楽器であること。
ピアノのような二つの音を出すのではなくて、笛のようなものなんですが、ただ、正しい音が出ない。肉が二枚重なった声帯というのがあるんですが、そこへ空気が送られ、伸び縮みだけで音程を変える。且つ脳が制御し、最後に複雑に口や鼻で音を変えて出すという、ものすごくメカニズムとしてみて面白いんですね。
最近、初音ミクというボーカロイドが非常に流行っていますが、あれも声ですが、ちょっとジャンルは違うんですけど、やはり楽器というものの発展形として、最終的に声というのは、テクノロジーが向かっていき、エンジニアがチャレンジしたくなる、一つの方向なのかなあ、と思います。

電子楽器の一つの方向性の究極、初音ミクが、人間の声を出す楽器になっていき、もう一方がメカニックに声を作っていくというもので、それが明和電機の場合、こういうボイスメカニクスのシリーズになっていくんですが、それが、面白い。
仕組みが面白い、声、それが一つ。

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_1742769.jpg

もう一つが、声、というのは簡単に人の心をきゅっと縛る。不思議な音なんですね。
犬がワンワン!と鳴いている音を聞くと、やはりギョッとしますし、赤ちゃんがワーッと泣いていると感情が動いてしまいますし、笑い声を聞くと楽しくなるし、音、なんですが、すごく人の心、感情に入ってくるというか、コントロールされる、感情に密接な音、というのがすごく面白い。

ざっくりいうと仕組みが面白いのは魚器シリーズの論理的な部分に近いですし、感情を使うというところでは、EDELWEISSに非常に近いですね。
それらが一つのシステム、メカニズムになり、手に取れるものとして、彫刻として存在できるというモノとして、ボイスメカニクスのモノたちが生まれてきたのかな、という感じがしています。

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_17461945.jpg出発点は何だったかな、と思って自分なりにルーツを考えていくと、そこにスケッチが一枚あります。
これはボイスメカニクスを辿っていくと、自分なりにここに辿り着いたひとつのスケッチなんですが、何のスケッチかというと、悪夢です。
魚の悪夢のスケッチです。
どんな悪い夢を見たかというと、魚を釣る漁師さんが船で漁をしていると、喉にガコッと魚が嵌るんですね。うぉっと思って、(嵌った魚を)バコンと取ると声がなくなってしまうという、そういう悪夢を1992年に見まして、自分の中で魚と声が引っかかっていたんですね、ずっと。



ものすごい強烈な絵ですが、これが大好きです。
どのくらい好きかというと、これをネタに漫画を描いたくらい好きです。
喉の奥に黒々とぽっかり空いた恐ろしい洞窟のような穴。その穴は永遠にどこまでも続いていそうで、そう簡単には塞がりそうもない穴に見える。
そしてこの”漁師さん”は、どうしても社長自身の顔に見えます。


それが魚器シリーズの中でも再三登場するんですが、その一つがサバオ、というものです。
これは何かといいますと13週目の胎児の顔をした腹話術人形で、体がピストルの型を使用しておりまして、引き金を引くと、
「いえ~い、サバオでーす。子宮からキマシタ~」
こう、喋るんですね。
この奇妙な声を出すと、よく、
「社長、あれはエフェクトですか」
と聞かれるんですが、エフェクトでなく生声ですね。
裏声をだしているんですが、これが面白かったんですね。自分で自分と対話する。この遊びが面白かったんです。声を通して自分の中に感情をもう一つ作るといいますか、人格を作るという遊びが面白かったんです。


明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_17521359.jpgサバオ君はどんどんどんどん発展していきます。最終的に大きなマスクを作りまして、僕これを被ってステージに立つようになったんですね。憑依、というやつですね。
これもやはり面白い。マスクの面白さですが、自分の中に違う人格を作り、演じるという。面の世界ですけれども、客観的に自分の世界を見つめるということをしました。しかも声を出す。

腹話術人形もそうですが、声というものを使って、人格を作り上げていったんです。それがどんどん膨らんでいくと、それを外に取り出したい、サバオを独立させたいという思いが出てきまして、それが、どんどん発展して、独立した形として、最終的にはEDELWEISSの影響を受け、女性型の歌うロボットを作りたい、という想いになり、作ったのがセーモンズという唄を歌う機械です。
2003年に、現在のものが出来上がりました。



確かに、初期スケッチでは、双頭のサバオがふいごの肺をつけている絵があります。
双頭デュオのサバオも見たい気がします。
なんか映画に出てきそうですよね。


明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_183053.jpg明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_18131551.jpgこれはどういう仕組みで歌っているかといいますと、ここに人口声帯があります。ゴムでできた声帯を作りました。二枚のゴムが合わせてありまして、空気が通ると音が出ます。
このままでは音程が出ませんので、ここに締め上げるしくみがあって音程を変えるんですね。
このふいご、肺にあたるんですがこれで空気を送って、歌を歌わせるんですが、問題は、どうやって歌わせるか、というところです。
ピアノのような楽器であれば、押さえれば正しい音が出ますが、これはどこまで引っ張れば正しい音が出るか解らないんですね。

且つゴムですので、気温によって、同じように引っ張っても音程が変わりますし、ということはこの発音体はものすごく不安定なので、正しい音を出す為の制御をしなくてはいけない。それは、何かといいますと、耳なんですね。
この、セーモンズには耳があります。
出した音をすぐ聞いて、間違ったら戻すという、フィードバックといいますが、そういう制御をすることで、正しい音程で歌わせています。
皆さんがカラオケに行って歌を歌うとき、一番難しいのは歌い始めですね。音程がわからないので。
絶対音感がある人はピタッと歌い当てますが、だいたいはそうはいかなくて、下から探るか、上から探るかのパターンで歌います。この機械もそうです。出してみてすぐ直すので、歌い始めがこぶしのような動きになります。
且つ、音階というのは、ド、ミ、ソ、と動きますよね。鍵盤だったらポン、ポン、ポンと弾けばいいんですが、こいつはゴムを引っ張らないといけない。
これは、例えると車の運転を、ピッピッピと止めるような感じ。戻って、進んで、って。でもそんな直ぐピタっと止まれるものでありません。慣性の法則もありますし。
それは音で聴くと、揺れになるんです。

この二つの問題は、このしくみでやるとどうしても出てきてしまう。
メカニズムの問題なんですが、それを聞くと、いい感じのこぶしとビブラートに聞こえるんですね。
制御の精度をもっともっと上げていけば、ピタッピタっと止まるようになるんですが、そうするとロボットが歌ってるような、ものすごくつまらない音になっていきます。
つまり、やってみて分かったことは、このメカニズムがもっている不安定さ、バグのようなものがあるお蔭で、このロボットは人間っぽく聞こえるんですね。

歌のうまさというのは味わいもあるなあ、とすごく思いました。
これはメカニック的な仕組みとして僕は面白かったんですが、もう一方で感情の面白さというところでは、この機械は当たり前ですが、心はありません。
セーモンズが唄を歌うと、聞いている人が、ときどき感動するんですね。
歌うところに感動しているんですが、それを見たときに、あ、そうか、と思いまして、心を込めて唄えば感動する訳でなく、心を込めた唄を表現出来た時に、感動するんですよ。
表現するというのはテクニックなので、そっか、そこは違うなあ、ということをすごく思いました。
このセーモンズ、3体造りまして、一体はフランスで講演で使ってるんですが、アン、ベティ、クララと名前が付いています。A、B、Cですね。



これを作った後に、今度もう一体造ったのがこちらの、バウガン、ディンゴというものなんですが、今度は歌声ではなくて、犬の声を出す機械です。
下図向かって左手がバウガン、右手がディンゴ。

人口声帯がやはり入っていまして、空気が入るとダミ声が出ます。
作ろうと思った動機は二つあるんですが、一つは先ほどのEDELWEISSシリーズで、エンジンで動く顎の話をしましたが、あの時代は犬に嵌っていました。
犬が持っている服従性と攻撃性がありますが、それがオスが持っている弱さと強さ、強さではない、オスが持っている本能に近いな、と思いまして嵌っていた時の影響を受けて犬の鳴き声を作ってみたい、と思ったのがあります。
そう思っていた時に、ちょうど喉の勉強をしている知り合いに、犬というのは声帯が二つあるんだよ、と言われました。
疑似的な声帯が二つありまして、そこに空気が通ると濁った音が出るんです。
口を閉じると「ん゛~」、開けると「あ゛~」、閉じると「ん゛~」、それを繰り返すと「ワン!」と言ってるように聞こえる、と聞いて、なるほど、と思いましてそれを単純に再現しました。
チワワ笛、というのがありますが、それはこれを簡易的に作ったものになります。

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明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_18264218.jpg
ディンゴはコンプレッサーに繋がって、空気を送ることでオレンジ色のゴムで出来た肺がふくらみ、スイッチを押すことによって、頭部先端の口の蓋が開き、任意のタイミングで押すと「ワン!」と吠えるもの。
このとき、空気の漏れるような、プツプツとした独特の音がずっとしているんですが、やかんが煮立つようなその音が好きでした。
(実際熱くはないのに)熱い温度のある音と、機械の冷たい感じとのギャップが面白かったのかな、と思います。


明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_18372668.png明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_18434214.jpgそのあと興味を持って作ったのが、歌声、犬の声、ときて今度は笑い声です。その笑い声を再現して作りたいなと思って作ったのが、このワッハゴーゴーという機械です。
この機械は電気は使わずに、フライホイールという重たい円盤を使います。どういう仕組みで笑わすのかというと、三つの笑い声を作るための要素を、頭の後ろにあるカムと歯車を使って作っています。
笑い声をどうやって作るかというと、要素は三つなんですね。
一つは、あーっはっはの、あーの部分、音程の変化です。
二つ目が、はっは、の息継ぎです。空気を出す、閉じる、出す、閉じる、その制御が二つ目。
三つ目が、ディンゴを作るときにもやりました、口を開ける、閉じる、の時にワン、という、ウ、ワ、ウ、ワ、と鳴る。
この三つを組み合わせると、「ワーハッハッハ」と笑うことが出来ると思いまして、作りました。実際作ってみると、ワッハッハではなくて、イーッヒッヒになりました。

余談ですが、何故電気ではなく、フライホイールにしたかと言いますと、電気であればここにモーターをつければ同じことが出来ますが、笑い、というのはトリガーがないと笑いませんね。可笑しいことを言われて笑うか、くすぐられて笑う。
何かのアクションが誰かからあった時に、トリガー、引き金を引かれて笑う。。


笑いを引き起こすトリガー。
ワッハゴーゴーの開発スケッチの中に、そのモデルとして一つの絵があります。
箱の中を鉄球が転がることによって、ある接点の付いた場所に当たると通電し、笑いを引き起こすというもの。
極めて人間的な笑い、というものを冷めた感覚で表現している。この絵が非常に面白いです。

それを何にしようかなあ、と思ったときに電気でスイッチを押してもいいんですが、フライホイール、おなかをくすぐるように回してあげるほうが非常に面白いなあ、と思いまして、あえて電気は使わずにフライホイールにしました。

よくよく考えてみれば、笑い声というのは一体なんだろう、何故笑い声を出すのか不思議なところでもありますね。
チンパンジーも笑うといいますが、動物の中でこんなに笑うのは人間しか居ません。
いろんな説がありますが、動物の生態学の方がよく言われるのが、威嚇、犬とかチンパンジーで言えば、相手を攻撃する前に、イーッと歯茎を見せて威嚇をしますが、それが笑いのルーツではないか、つまり笑うことで相手を拒絶する。こっちくんな!と。
実際に、愛想笑いでそういう笑いもあるんですが。

では、僕が一番好きな笑いはなにかというと、ナンセンスなことを見たときに脳みそがカチンとずれて、笑うしかない状況になる、それが僕大好きで。

社長はいつも、自分のナンセンスな作品によって、観客のあたまの中にもナンセンスが生まれるのを期待している。その、ずれ、ですよね。

さて、ここまで作って非常に面白かったのが、口の開け閉めで簡単に音色が変わる、しかも表情が付く、このしくみです。
これを使っておもちゃが出来ないかな、とおもちゃ会社のキューブさんと、Tsukubaシリーズでノックマンというおもちゃを作ったように、この声のシリーズでも一つおもちゃを作ろう!となったんですが、なかなかそのアイディアが出なかったんですね。

一番最初はワッハゴーゴーのような、顔をつぶすと笑うボールを作ろう、というアイディアになりかけたんですが、イマイチ面白くないぞ、と悶々と悩んでた時にポーンと出たのが、オタマトーンでした。
笑うのではなく歌うボールといいますか、歌うおもちゃのアイディアが出ました。

このオタマトーン、顔の部分がワッハゴーゴーの顔と一緒の、口の開け閉めだけで音色を変えるという、フォルマントと言いますが、非常に単純な仕組みです。
これが、色んな符号がピッタリ合ったんですけれども、音符の形をしている、これは世界中誰が見ても音符というのが音楽、と解り易くて、それが歌うというものすごく強烈な記号、イメージです。
それで世界中で大ヒットしました。
因みに、ワッハゴーゴーまでの開発を、最初のセーモンズからだいたい七年やってたんですが、これらはアートとして作っているので、販売はしていないんですね。なので、どんどんお金が出ていくばっかりでした。
そのままだと明和電機倒産、というところまで行ってしまうんですが、お陰様でオタマトーンのヒットでなんとか回収は出来たという、救世主のような存在です。

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_19103265.jpg

救世主、オタマトーン。これはジャンボですが。

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 ボイスメカニクス編_b0056352_19141269.jpg
現在も、エクササイズなんですが、空気を使って鳴らす楽器を作っています。
シリンダリコーダーや、先ほどピアニカを自動的に動かす機械もありましたが、あれも空気制御で動いています。それは、ボイスメカニクス全て、声、を出すという空気制御なんですね。
電気、よりもっと難しい空気の制御というのが、電気の制御とは全く違う面白さがありますが、空気制御のトレーニングをする為に、そういうノウハウを入れるために、そういう楽器を作ってもいます。

さて、皆さんにお話ししてきたTsukubaシリーズ、魚器シリーズ、EDELWEISSシリーズ、ボイスメカニクスシリーズ、ここまではアートの話なんですが、明和電機の特徴は、アートだけではなく、アートをプロモーションしたり、プロダクトにしたり、二次展開することで商売をする、というところにあります。

その説明をする為に、隣の隣の部屋に移動します。



シリンダーリコーダーのアップ。



次、いよいよ最後のマスプロダクト編に続く。
# by satomimiwo | 2014-03-10 17:33 | 明和電機20周年展
明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_1910787.jpgTsukubaシリーズ、Nakiシリーズ、そして同じ並びの最後のつき当りの部屋が、EDELWEISSシリーズの部屋になっている。
EDELWEISSを象徴する、ローン・グリーンの看板がその世界へと迎え入れてくれる。

この部屋がEDELWEISSシリーズの作品を置いてる部屋です。
僕は電気屋さんの格好をしていますが、この部屋に入ると自分でも違和感を感じますね。このスタイルが。

そういえば、2004年の、初台の展示では社長はずっとアニエスの制服を着ておられました。
作業着というよりはスーツのようで、コバルトブルーとエメラルドグリーンの中間色のような淡い色は、EDELWEISSの世界ともよく似合っていました。
EDELWEISS PROGRAMの構想をされてて、それが完成した年でもありましたが、ヤマメン製の作業着を着用するのは、そのころ違和感を感じていたのかもしれません。

その後、社長はアニエス製の黒いスーツを着用して現れます。なんというか反則ですわ。これは。
しかも当時、その姿でドラム叩いてる画像を流されたり、スライドショーがあがったりですね、これはもうね、反則で販促です。あんまりね、芸術活動されてる方に改まってこういういい方はしたくないんですが、つまるところかっこよすぎなんですわ!!!!


自分がつくったもののと、このスタイルが合ってないなあ、といつも思うんですが。それも、そのはずで、EDELWEISSシリーズというのは先ほど魚器シリーズの反動から生まれた、という話をしましたが、そこをもう少し詳しくお話しますと、魚器シリーズというのは、自分とは何だろう、ということを追求し、それを生物学的な論理から、がーっと考えていった仕事だったので、感情は使わずに作品を作っていったんですね。
自分の中のどろどろとした情念を、理性で締め上げたシリーズでありました。なので、魚を殺してしまう機械なんかも登場してしまうんですね。
でも、表現というのはそれだけではないんですね。感情で、やっぱりガッときてバッと作る部分もあります。それをずっと抑えてて…感情をコントロールするのが好きでやってたんですが、だんだん限界を感じるようになりました。

それからもう一つが、この電気屋さんのスタイル、これでは表現できないものも自分の中に出てきました。
この電気屋さんのスタイルは何かといいますと、これは僕の父親へのオマージュみたいなものがありあます。それは父親、というか、父性、ですね。それから昭和というものへの憧れ、そういうものがあるんですが、僕は小学校六年生の時に、明和電機という父親が始めた会社が倒産しまして、父親とは別居しました。それ以来、大きくなるまで…明和電機を始めるまで殆ど会ったことがない。六年前に亡くなったんですが、殆ど会える機会もなかったっていう感じでした。

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_19231831.jpg
EDELWEISS展示全体図。中央に祭壇がある。EDELWEISSの展示は、教会をイメージしている。

なので、父親を超えて行くという、思春期にぶつかってね、くそおやじ~!っていうことをやると思うんですが…男の人は。それをやってないんですね。
そのままいってしまって、ただ大学院を卒業するときに、自分が25歳で、父親のスタイルの明和電機を勝手にやり始めたんですが、親父が明和電機を作った年代にだんだん近づいてきた時に、自分の中で父性を抑えっぱなしにしていることにおおっ?と思いまして。
そこに目を向けなきゃいけないんではないか、という思いもだんだん出てきたんですね。それと明和電機というスタイルがいいなあと思ったことと相まって、なんでしょうね、父性をコスプレ、してる感じですかね。
明和電機社歌とか、男だけでこう、わーっと…割と男気溢れる世界なんですが、ただ、僕が根っからの男気か、というとそうではないんですね。大好きですけど、そういう世界。魁!男塾とか大好きですけども…。
姉が二人居るんです。一番上が海上自衛官、二番目が看護婦というコスプレ姉弟なんですが、姉・姉・兄・ぼくという構成で、一番上の姉に子供が五人居るんですが、そのうち四人女の子、というね。女だらけ。土佐家というのは女が強い、女系なんですけれども、小学校の最初に読んだ漫画は、マーガレットとかですね、そういうところから始まりましたし、姉はおもちゃのように弟を女装させて、女物着せて遊んでましたし、まあ、僕はゲイでもなんでもありませんが、何かそういう可愛いものとか女性性というのが中に浸透して、ぴゅっとあるんですね。
…ぴゅっ??
それはずっと抑えてたんですが、そういうものとか、感情というものが、明和電機をずっとやってて抑えられてきたものが、やっぱり出てきた。
それは魚ではなく花というシンボルで、出てきました。そして始めたのがこのEDELWEISSというシリーズです。なので最初はコソコソやってたんですが、途中で開き直って、2000年から本格的にやり始めました。


明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_1935466.jpg魚から花へ…魚から、花が咲いている絵がありますが、あれがとても好きです。
それをイメージしてこれ→を描きました。
魚から花へ、その絵は魚コードのできるまで154ページにあります。

このシリーズを始めようと、じゃあどうやってモノを作っていこうかなあ、と思ったときに魚器シリーズとは違う手段をとりました。それが、皆さんの前にある本(EDELWEISS PROGRAM)ですね。これは、EDELWEISSのバイブルです。
女とは何か、というのがシリーズの根幹になっています。それは魚器シリーズのように自分とは何か、というのを考えずに、あなたは誰?、という自分の感情をぶつける対象、神秘性、うちの家族が女系ということもあり、女性の強さに対する畏怖の念みたいなものもありまして、そういうものを纏めた、自分の気持ちをポエムにしたEDELWEISS PROGRAMという本です。

まず、このEDELWEISSの物語というのを書きました。
おとぎ話です。これはどういう話かというと、女性がめちゃめちゃ強く、そして男性がめちゃめちゃ弱いという架空の国、週末の東京と書いて「末京」という国を想定しまして、ここに生きる三人の脆弱な男の子の物語を書きました。

月の世界(月宮)から地球(末京)のメスに会いに行く「ボク」の物語(APPLE ENGINE)、ガラスの子宮を使って、髪を梳くと唄う櫛を造る「ボク」の物語(HUMMING COMB)、ナイフの刃を持ったエンジンで動く顎でメスを噛み殺す「ボク」の物語(プードルズの反乱)、以上3人のボク。


明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_22313819.jpg



明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_19474261.jpgどういう国かといいますと、上にぶらさがっている六角形のオブジェがありますが、あれが末京の都市モデルです。
女性がめちゃめちゃ強い国ですが、何をしてるかといいますと、欲望を開放して、好きな化粧品や衣服、アクセサリーなんかをばんばん作って、着て、棄てまくって、という国ですね。
中央に根っこみたいのがありますが、石油を吸い上げるプラントが中央にありまして、それを精製して麓に運ぶ。それをもとに自分の好きなものをガンガン作り、飽きたらすぐ捨てる。都の六方向の一番先端に大砲が六個ありまして、ゴミは全部その大砲がバーンと撃ち棄てる。そして都を囲んで周りにはゴミの砂漠が広がっているという状態です。

そのゴミはプラスチカと呼ばれるもので出来ている。
プラスチカは、生殖器を冒す有害成分がある。

オスとメス、という表記について、昔社長が語っていた言葉があります。

生物的な意味で「オス」「メス」という言葉を
使っています。「♂」「♀」でもいいのですが、
わかりにくいので。

できるだけ性別を冷静に区分したいとき、
「男(オトコ)」「女(オンナ)」だと情念があるし
「男性」「女性」だと、社会性がありすぎる。
「雄」「雌」だと書きにくい。
で、「オス」「メス」に落ち着きました。

生物学的に、芸術的に、冷たく、男と女の世界を
描いてみたい。感情の部分は極力排除して。
そういう欲求です。


オス、メス。EDELWEISSの世界観にこれ以上しっくりはまる呼び方はないでしょう。

これを書くときには、論理とかはなくて、ポエマーです。もう、気持ちは。昔から実は僕ポエマーで、中学の時は学校から帰ったらポエムの時間、というのを作ってて、詩と絵を描くスケッチブックというのを描いてたんですね。なんでしょうねあれは。もうはずかしい、の塊ですね。
その存在をボクはすっかり忘れてました。明和電機やってるときはそういう記憶すっかり飛んでたんですが、ある時実家に帰ったら母親が、
「のぶみちこういうの出てきたわよ~」
ってその中学の時のポエムをパーンと出してきまして
「うわああああああああーーーっ」
ってその時は魚器シリーズの論理の塊みたいな頭だったので、なんじゃこりゃーーっって思いまして、見たらもうショッキングで、誰にも見せられないっっ!!て思ったんですが、ただ、ああ、そういう気持ちの時代があったなあって思いましたね。厨二病というやつですね。そういうセンチメンタルな時代があったと。
あ、これだあ!と思いまして、センチメンタルとかロマンチックという感情を大事にして、物語を書き、その物語からビジュアルを作り、人形やジオラマなんかも作ったりして、EDELWEISSというのを始めたんです。
人形を作って終わるとそれは、映画とかアニメーションの話なんですが、EDELWEISSはそこで終わるんでなくて、それをモチーフに、本当にこういう実際のオブジェを作っていこう、というのが目論見でありました。


明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_20242878.jpg明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_20365343.jpg全ての作品にはEDELWEISSの物語の一ページが対応してます。カバラみたいな感じですが、その聖書の中の言葉が、本当になる感じです。
一ページが一つの作品に全て変わっていく、ということをしたいなあ、と思いまして作ったものです。
一番最初にでかいものとして作ったのが末京銃というマシンガンです。2000年に作りました。このマシンガンが、普通のマシンガンと大きく違うのが、弾丸がガラスで、その中にマツモトキヨシで買った150種類の化粧品が詰まってるんですね。 
2000年のころにマツモトキヨシといえばもうすごかったですね。コギャルというのが流行った時代で、女子高生がマツモトキヨシに行って化粧品をばんばん買ってすごい化粧を始めた頃だったんですが、それを見てて、なんで女性は化粧するんだろう、という好奇心が沸きまして作ったものです。
先ほど、週末の東京で末京といいましたが、これマツモトキヨシのことでもあるんですね。
そこからインスピレーションうけて作ったんですが…、このガラス150種類、20万円分くらい買いましたね。香水とか、色んなものを詰めまして、空気圧で発射するんですが、発射すると壁に当たって全部割れますね。ばーっと。
そうすると全部混ざるんですね。混ざると末京液という液体が出来る。それが作りたくて作ったものです。


このデモンストレーションを見たことがあります。アクリルのケースの中にダダダと打ち込んでいく。青みがかった白い液体が、底のほうに溜まっていました。そしてこれをやると、辺りが良い匂いで包まれるんですよね。

女性の化粧というものの不思議さというのは…まあ男性も最近は化粧しますが…不思議なものに僕はすごく見えてしまって、阿部公房という作家が、”化粧とは最低限身体に害のない石油化合物である”と言ってますが、体には非常に良くない筈のものを、つけて取ってつけて取って、とやってる訳ですよね。毎朝。
その不思議さと、一方でその石油化合物をつけてはいけない、子宮、サバオというのが出てきますが、赤ちゃん、子宮の話をよくしますが、そこは冒してはいけない、すごく神聖な部分もある。
女性のその、聖域の部分と、その石油まみれになってもいいというその二面性が面白くて、化粧とは何か、ってことでこの末京銃を作りました。

僕は母性の象徴として、ずっとサバオというキャラを使っていますが、これは13週目の胎児の腹話術人形なんですね、出発点は。それがどんどん発展しまして、EDELWEISSでも登場します。
サバオというのは胎児ですので、子宮の中に居るキャラクターです。僕は大学四年の時に先ほどお話しした、妊婦が動くロボットを作ったんですが、基本的に子宮フェチですね。
命が作られるしくみとして、男は持ってない、装置…装置というか器官、子宮というものが、憧れ、憧れというか、すごく不思議なものとしてありますので、その中に居るキャラクターとしての胎児というのが非常に何度も出てくるんです。
その、サバオを被ってしまっている、キャラクターになってます。



サバオがニュートン銃を抱えている。
APPLE ENGINEで、「ボク」がスロットルルームでみつけたという胎児のイコン。それはサバオだったのだろう。ニュートン銃は、重力によってリンゴが地球の中心を打つ装置。リンゴの重力を使ったロケットで地球の末京へ長い旅をする、月宮の「ボク」。彼もまた、冷たいガラスの子宮から生まれた子供。
胎児のイコンにいわば「憑りつかれた」彼は、メスから産まれる胎児になりたかったのかもしれない。



明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_21385532.jpg今度はこの、あごにナイフの刃がついているオブジェなんですが、これは男の話ですね。
物凄く強くなってしまった女性に対して、EDELWEISSのお話の中で戦争をしかける男たちが居るんですね。脆弱なオス達なんで、まともに戦っても女性に勝てない、ということで武器を作るんですが、それがこの、失った顎です。オスが昔持ってた顎。牙を取りつけてエンジンで動かす、という顎を使って戦うという話があるんですが、それを本当に作ったものです。


もとは末京の男娼だった「ボク」。末京を出た、地下生活者のプードルズというオス達を引き連れて、ある月夜の晩に、末京のメス達に総攻撃をしかけるが、あえなく敗れてしまう。
足元にあるナイフは、「ボク」が最初にメスを引き裂いたナイフだろうか。

この下にホンダのエンジンが付いてまして、それが動くと顎がガクガクガクって動くという。絶対被りたくないですが僕は。
非常に危険な武具なんですが、これもやっぱいインスパイアをうけた事件がありまして、それが2002、3年かな。バタフライナイフを高校生が学校に持っていってやたら振り回す、という事件があったんですが、その時に、男たちがバタフライを持たないと対等になれないんだ、と思いまして、女性が華々しく花のように元気になっていく周りで、男はバタフライ、蝶々かよ!と思いまして、面白い!って思って作ったんですね。
ま、非常に怖い形をしていますが、そういう落差みたいなものを彫刻で作ってみたくて作りました。

EDELWEISSシリーズというのは現在も進んでおりまして、まだ終わっておりません。四つめの物語というのを今、構想中です。
三人の男の子のジオラマがありますが、四人目の男の子(泣く羊)、女性に対する自分のポエム、イメージを形にした男の子を現在構想中で、4月に市川市の
芳澤ガーデンギャラリーというところで発表していこうかなあ、と思っております。

一度は封印しかけたこのシリーズの、最後の物語を発表するという。
2003年からずっと見ていたシリーズなので、なんともいえない思いが去来します。

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_21464340.jpg

体温で色が変わるというブラッド・リング。
それぞれ、動脈と静脈を表している。
この銀のほうを中村至男氏とのトークショーで、社長が嵌めているところを一度だけ見たことがある。


明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_21484756.jpgハニー・ハンガー。
これについて、2002年に社長が面白いことを書かれてたので載せます。

EDELWEISSのアクセサリーを作っていたころから
それを飾るボディ=マネキンが欲しいと思っていました。
今回 MAX&Co.からハンガー制作以来がきたとき、
「服をかける道具」=ボディへの興味から
作ってみたい、と思いました。
ハチミツの汗をかくハンガーです。
このハンガーには、絹でできた服をかけてみたいです。
どちらも昆虫の嘔吐物からできているから。

衣服をかけると、中のハチミツが染み出して、洋服がベタベタになるというもの。
この、昆虫の翅脈のような「管感」が好きで、男娼の衣装を描くとき必ず取り入れてます。

明和電機ナンセンスマシーンズ展in金沢21世紀美術館 EDELWEISSシリーズ編_b0056352_21565699.jpgそして今回、EDELWEISSのオリジナルストーリーの漫画を置かせていただきました。
何と言ったらいいか言葉が見つからないくらい、不思議で良い思い出です。男娼の衣服を描くのは大変ですが、やっぱり楽しいです。
この中に登場する、男娼の腕の柄は、社長が以前描かれたものをトレースしてます。
なんていうか、バランスの取り方が本当に綺麗なんですよね。




最後に、2004年の、EDELWEISS PROGRAMを書き終えた後の社長の言葉で締めます。
当時の、社長の生きた言葉がそこにあります。



女性への愛や礼賛を主題にしながらも、
理性や感情ではなく、
感覚を手がかりにして物語を
精製していくと、
残るものは、
溶けにくい、尖った、イメージの石塊でした。
自分も、そんなものが残るとは思いませんでした。

肉体や精神の中ではなく、
美学という絶対基準が宿る場所が自分の中にあり、
EdelWeissでは
いまだそれを実世界に解凍していく余裕もなく、
ただ発掘作業を続けています。

光が見つかるまで、もうしばらくお待ちください



VOICEシリーズへ続く。
















# by satomimiwo | 2014-03-02 22:35 | 明和電機20周年展